マザース三日坊主

「本の場所」

CMの現場から離れて15年たちました。なにか作っていたいという気持ち
を消すことができず、小説を書いたりしています。
こんど知り合いのふたりと「本の場所」というものを作りました。
著者自身による小説朗読会を毎月開きます。朗読会を柱に美術、映画、写真
など表現行為すべてを扱っていくつもりです。
一緒にやるふたりは美術畑の人間なので、当然美術には力が入ります。
江戸期美術が中心になります。蕭白、暁斎、若冲、応挙、国芳など。
ホームページがつい先日開設されました。マザースの風間さん、遠藤くんが
作ってくれました。感謝感謝です。
10月の第1回は昨年の芥川賞受賞者の柴崎友香さんの朗読会です。
11月には十文字美信さんの会があります。
時々ホームページをのぞいて下さい。面白そうと思ったらおいで下さい。
honnobasyo.com

川崎徹

アクセルのこと

Aではじまる名前のジャーマンシェパードは、世界的にも最優良血統のセレブだそうで、Accel(アクセル)はその高貴な家系に生まれました。両親も兄弟姉妹もみんな警察犬でしたがアクセルだけ違いました。試験に落ちたからです。

アクセルはスナックKの自宅部分にある駐車スペースかその奥の小屋にいて、伸縮性の黒い柵越しに歩道から呼びかけると必ず律儀に出てきました。なかに「ラッキーちゃーん」と違う名前で呼ぶ人がいましたが、同じです。

徐々にアクセル目当てに立ち寄る人は増え、まれには子どもたちが順番待ちになったり、寝ている深夜や早朝に呼ぶ輩もいましたが、律義さに変わりはなく、今風に言えば神対応でした。

そのうち駐車スペースの脇の壁には、「いつでも散歩につれていって下さい」という主旨の張り紙とともに、散歩用のごついリードがぶらさがるようになり、見知らぬ誰かと散歩するアクセルを見かけるようになりました。子どもたちと散歩のときは先頭を歩いていました。

「食べ物は与えないでください。アクセルがお腹をこわします。」という張り紙も追加されました。差し出されてこれもまた律儀に食べたのでしょうか。隣の隣がコンビニという立地も良くなかったのかもしれません。経緯はともかくアクセルにはお腹が痛い日があったということです。

私に引っ越しがあり、その後は車で通りかかった折にその駐車スペースを確かめようと試みるぐらいでしたが、環七からではスピードが出ていてよく見えませんでした。

一度だけひどく渋滞している時がありました。いつもの柵の内側には黒と茶の固まりがあり、以前より茶の色が濃く、毛は長く伸びて見えました。それがアクセルだったのかはわかりません。壁の張り紙やリードの類いは見逃しました。そしてまた引っ越しをしたのでもう環七は通ることもなくなりました。

今なお、知り合いのセレブといえばアクセルしかいません。