マザース三日坊主

地下鉄の中で

とても便利な交通機関の地下鉄、私も通勤におおいに利用しております。
そんな地下鉄に乗っていると、実にいろんな人々が乗っています。
この前の日曜日の午後、会社へ向かう地下鉄の中でのことでした。
日曜の午後でしたので、車内はすいていました。なので私も座ることができました。
すいている地下鉄大好きと思い、そのうち眠くなってうとうとしてると、
なにやら変なニオイが私の鼻を刺激しました。
「くさっ!」
と心の中で舌打ちをし、この不快な異臭はどこから来ているのだと周辺を見回すと
隣に座っていた女性が、マニキュアを塗っていました。
「電車でマニキュアなんか塗ってんじゃねーよ、ボケッ!」
と心の中で悪態をつきました。
隣の女性、正確に言うと、私とそのマニキュア女との間はひとつ空席があったので、
隣の隣のマニキュア女ですが、爪をフーフーして、マニキュアを乾かしてます。
「フーフーすんなよ、ニオイがこっち来るだろ、バーカ!」
とまた、心の中でマニキュア女に悪態をつきました。
でも、私の心の叫びが分かるほど、マニキュア女は勘が鋭いわけではないみたいで、
さらに、別の爪にもマニキュアを塗り始めたのです。
ほんと死ねばいいのにとも一瞬思いましたが、死ぬわけもなく、またフーフーしてました。
マニキュアって、プラモデルの塗料みたいなもんだから、すごくシンナーくさいですよね。
地下鉄の中でシンナーぶちまけたら犯罪だと思うんですが、どうなんですかね、実際。
車内はすいていたので、別の席に移るという賢明な手段もあるにはありましたが、
そんなことしたらお前の負けだという気持ちが強く、あと移動すんのもめんどくさいというのも
あって、最初に座った場所から決して離れることはありませんでした。
あともうひとつの方法として、そのマニキュア女にちゃんと注意するという、ごくごく真っ当な
方法もありますが、そこまでする勇気は自分にはありませんでした。
自分のひ弱さにがっかりです。
なので、これは我慢だ、修行だ、時間が解決してくれると思い、そのまま乗っていました。
で、結局乗り換えの駅に着くまで、嫌な気分で地下鉄に乗ってしまいました。
やっぱり席移ればよかったなあ、次はそうしようと思いました。
でも、地下鉄(というか公共の乗り物全部)のなかでマニキュア塗るのだけは、ほんとに
勘弁していただきたいです。化粧は百歩譲って異臭がなければ、我慢しますので。
でも、つけまつげを木工用ボンドみたいので貼りつけてるのは、別に見たくないです。

オレンジ電車

中央線のオレンジ一色の電車。
ニュースなどで目にした方もいるかとは思いますが、
実はこれ、今年の10月17日を持って引退したんです。
思ったよりひっそりと引退したようでした。
オレンジバーミリオンという色で全面塗装されているその電車は201系とよばれているらしく、1979年8月から走っていたそうです。
生まれる前から走っていた電車ということもあり、思い起こせばこの電車に乗って小さい頃色んな場所に連れて行ってもらったり、鞄が宙に浮くくらいの満員電車で通学したり、実家に帰ったり、と言葉では言い表せないくらい色々な思い出があります。
大学生くらいになってから、最近多いシルバーにラインのみの最新な感じのタイプの車両が走り出し、当時はその新しい電車に乗れるとラッキーくらいの気持ちでいました。
ですが、徐々に車両の数が逆転していくうちにオレンジ一色に会う確率もだいぶ減り、意識していないうちに引退、というポスターを目にし、しみじみし始めました。
それからは実家に帰る度にもう一度乗りたいな、とホームに入ってくる電車を若干期待しながら待っていたのですが、毎度期待はずれの最新車両で、とうとう乗れないまま引退の日を迎えたのでした。
最終日は豊田駅から松本駅まで走ったそうですが、なんと出発駅に600人も集まったそうです。
色んな人の思い出が詰まったオレンジ電車ですが、松本駅に到着後はスクラップ処理の工場に運ばれる、と聞いて本当にもう見れないんだなぁとなんだかさみしくなりました。
そんなしみじみとした出来事でした。

文楽

人形浄瑠璃、つまり文楽が好きです。
何が面白いの? よく聞かれます。
● 三味線の音。文楽は三味線で始まるのですが、静かな劇場で聴く三味線の音の不思議な感じ。これがとても気持ちいい。時間の流れがいつもと違います。
● 太夫の声。何を言ってるかよくわからないことも多々あります。長いし。でもこの語りと言うか唄が普段耳にしない波形の音波だと思うのです。意味がわからなくても聴いていて気持ちが落ち着きます。
● 人間国宝の竹本住大夫。一番人気の大夫さんですが、この人の語りは断然わかりやすい。物語も気持ちも。
● 物語が実は面白い。殺人。自害。毒殺。情愛。憎しみ。恋。裏切り。親子。人情。義理。政治。どちらかというと暗いテーマや濃いテーマ、荒唐無稽な筋立ての演目も多く、意外と飽きません。それはないだろう〜という無理な話もありますが、聴くとそう感じないのが面白いところです。
● 人形が美しい。人形自体の造形が美しいというのではなく、人形という限られた手段で人間を演じることで、人間の美しさ(?)のようなものが凝縮されて出てくる。女形が女っぽくみえる、というのをさらに突き詰めたような。
● 劇場が小さい。安らぎます。
● 年寄りの香り。観客は年配者が多いので、独特の香りがする気がします。
● 寝ると気持ちいい。やはり眠くなります。三味線と大夫さんからはアルファー波が出てるのかなあ、というくらい気持ちよく寝られます。そしてぼーっと目を開くと三味線の音が聴こえてくる。ああもったいないことしたなあと思いながら、頭のマッサージを受けたように爽快に目が覚めます。
7~8年前のことでした。文楽公演のポスターをたまたま見かけて、
「見たことないから行ってみようかな」と思い立って劇場に電話したところ、
「満席です」
「明日は?」
「すべて売り切れです」
2週間も公演しているのに売り切れなのかあ。面白いのかな、と興味を持ちました。
次の東京公演は事前にチケットを買って国立劇場に行ってみました。
それが観るようになったきっかけです。
世の中には面白いものがまだまだある。
そう思うとちょっと楽しくなります。

ダンスを見る。

マザースに入社してしばらくした頃、昼休みに読んだ雑誌に
ウィリアムフォーサイス率いるフランクフルトバレエ団の記事が載っていて、
バレエには全く興味がなかったのですが、たまたま当日だったので何となく
上野に見に行ってみました。
その時見た公演は、それまでのバレエに対して持っていた想像とは全く違い、
ダンサー男女問わず、みんなおかっぱ頭、セーラー服とプリーツスカート、
電子音楽に合わせて、意味不明な動きをしていました。
これがバレエ?わけが分からない。でも、なんだかきれいだ!
これは何だ、いったいこれは何なんだ、という驚きと同時に背中を電気が
走るような感覚がありました。そんな体験は初めてでした。
こんな世界を知らずにいたことに悔しささえ抱きながら、その後国内外の
ダンスやバレエ公演を見るようになり、バレエのこと、ダンスのことを本で読んだり、
詳しい人たちから話を聞いたりして自分の好きなものを探すようになりました。
今よく見ているのは、コンテンポラリーダンスと言われる
クラシックバレエとはちょっと違う、今の時代を取り入れた、言ってみれば何でも
ありの同時代ダンス。
ストリート系やモダンダンス系や、これからも新しい作品や人材が出てくると
思いますが、たぶん私が一番良く見ていて、これからも見続けると思うのは、
勅使川原三郎のダンスです。
名前くらいは聞いたことがある人もいると思いますが、舞踊だけでなく、
振付け・衣装・舞台美術・音楽・映像など全てを制作する才能の持ち主。
全部ではないのですが、もうかれこれ10数年、その作品を見ていて、
その都度何かしら必ず新しい発見をすることが出来、その完成度には
いつも感心させられます。
きっと、自分のやりたいことをただやり続けているだけなんだと思います。
でも、何だかいつも勇気みたいなものをもらうような気がします。
そして、次もまた行こうと思ってしまいます。
舞台作品は生もの。その場にいなければ味わうことが出来ないものです。
この次はどんなことが起こるのか、やっぱり私はまた劇場に足を運んでしまいます。